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吉田真里子は生牡蠣の夢を見るか?〜ブレードランナー私的論

 20171101ketty-ke表紙
こちらの文章は、1995年頃に1年余をかけて製作した個人誌「KETTY-K」に寄せた
ものの抜粋です。
 当時発表された歌手・吉田真里子のアルバム「匿名希望」に感銘を受け、自分なりに
楽曲を分析論説を試みたもので、その一端として(成り行きで)映画ブレードランナーに
関するテキストも長々と記すことになりました。

 実際は、2004年頃に一度、当時更新していたホームページに全テキスト掲載したの
ですが、そのデータ自体今は喪失してしまったので、再度原本から打ち直してこちらにて
再発表させていただきます。

 尚、現時点では明らかな事実誤認、明らかに間違った言い回し誤用、差別的表現も若干
あろうとは思いますが、過去の自分が記したものとしてあからさまな誤字脱字以外はその
ままにしておきますので悪しからず。
 
20171101吉田真里子は

 同居しない人たち

 「ブレードランナー」では、酸性雨が降り続ける2019年のLAを舞台に、
人造人間(レプリカント)と彼らを追うブレードランナー〜リック・デッカード
が自己のアイデンティティーを探し迷走する様が描かれている。
この世界においても、「匿名希望」のテーマの一つと同様の「自分探し」が
各々の立場から描かれるのだ。そしてこれは原作の「アンドロイドは電気羊の
夢を見るか?」及び、原作者であるフィリップ・K・ディックの全作品に通ずる
テーマでもある。それ故にこそ、彼は「ワンパターンのディック」と揶揄された
のではああるが。

 ヴァンゲリスの♪Memories of Green が流れる中、ハリソン・フォード演ずる
リック・デッカードが高層マンションのベランダから遥か下方に広がる道路を疾走
して行くパトカーのサイレンを聴いているシーン。
 そう、デッカードは下方を見下ろしているのだ。この場面に限らず、彼に限らず、
「ブレードランナー」の登場人物全てが皆俯いている。
 俯いているだけではない。この都市で蠢めく人々は皆、只一人、自らを他者から
隔離し、客観より隔絶された世界でよたよたと進むのみなのだ。
「ブレードランナー」が閉鎖された世界で自閉症状態の人達を描く映画である事を
証明する要素は数多く見出す事が出来るが、まず最初に「会話」のシーンから取り
上げる事としよう。

 冒頭〜①タイレル社でのホールデン刑事とレオンとの対峙から始まり、②寿司屋の
親父とデッカードの会話/③ガフとデッカードの会話/④警察署でのブライアン署長
とデッカードの再会と、続くレプリカントの捜査に関する説明を受けるシーン/⑤タ
イレル社でのレイチェルとの出会いからフォーク・カンプト検査を行うシーン/⑥タ
イレル社長とデッカードの会話/⑦ロイ・バッティとレオン/⑧眼球製造人とロイ・
バッティ/⑨マンションで再び出会うデッカードとレイチェル/⑩ブラッドベリビル
前でのプリスとJ・F・セバスチャンの出会い/⑪複製蛇の鱗の製造ナンバーを調べる
老婆とデッカード/⑫複製蛇職人とデッカード/⑬デッカードとタフィー・ルイス/
⑭テレビ電話でのデッカードとレイチェル/⑮楽屋でのゾラとデッカード/⑯酒屋の
女主人とデッカード/⑰後ろから現れるガフとデッカード/⑱スピナーから降りるブ
ライアンとデッカード/⑲格闘するレオンとデッカード/⑳部屋に戻ったデッカード
とレイチェル/㉑眠っているセバスチャンとプリス/㉒不意に入って来るロイとプリ
ス/㉓朝食を摂る3人/㉔タイレル社へ赴くセバスチャンとロイ/㉕タイレル社長と
ロイ/㉖スピナーの警官とデッカード/㉗テレビ電話でのデッカードとプリス/㉘格
闘を経てビルの屋上でのデッカードとロイ/㉙スピナーで現れるガフとデッカード/
㉚マンションに戻ったデッカードとレイチェルー。

 劇中、行われる会話のシーン全てを書き記して見たが、この中で対峙する者同士が
同一画面で視線を合わせて会話をする場面というのは殆ど認められないのだ。①では
同じテーブルについてい乍らカメラは向かい合う二人を各々一人ずつしか捉えていな
い(1カットだけ遠景気味に対峙する二人が映る場面があるにはあるが、カメラが退
いている為彼らの表情、口の動きすら判別する事は困難だ)。加えて何の説明も無い
儘突然交わされる(その時は)訳のわからない質問内容が観客を混乱させるのである。

 デッカードとレイチェルについても同じ事が言える。⑤、⑨において二人は同一場
面にすら殆ど登場しないのだ。複製の梟を眺めているデッカードに、遠くから近付き
つつ話しかけるレイチェル、煙草の紫煙を燻らせつつ検査を受けるレイチェル、マン
ションに戻って来たデッカードが入ったエレベーターの中に「予め」いたレイチェル、
部屋に入りデッカードに少女時代の写真を見せるレイチェルー。殆ど全て、カメラは
デッカードとレイチェルを一人ずつだけ捉えている。

 只、二箇所だけ二人が同一場面に現れるカットがある。一つ目は、デッカードの近
くに歩み寄って来たレイチェルがレプリカントに関する質問をする場面。レイチェルは
テーブルの左端に入りデッカードの前をすり抜け、テーブルの右端に立つ。二人は一応
同じ画面に佇立する事になる。が、しかしこの場面では窓の向こうでくすぶるように輝
いている太陽が中央に据えられており、これによる二人は右と左に分断され、更に逆光
の為殆どシルエット状態になっている。
 また、二つ目は、エレベーターから出たデッカードの後に続いてレイチェルが廊下を
歩いて来るシーン。ここでも明確に二人が同一画面に現れるのだが、デッカードはレイ
チェルに背中を向けた儘、会話すら交わしていないので意味合いとしては同じ事だ。

 その後、レイチェルはレオンを射殺してデッカードを助け、⑳部屋に戻った二人は
そこで漸く同一画面に並ぶ。やがて、彼らはピアノの音を介して次第にお互いに惹かれ
合って行く。ピアノの前で顔を並べて座る二人。接吻と抱擁を通過する二人。そして、
㉚ラストにおいてデッカードは横たわったレイチェルを見下ろす。ここに至って完全に
二人は「同一画面で互いの顔を垂直に向かい合って見つめる」のだ。レプリカントと
人間の範疇を超え、男と女として互いを理解する刹那である。

 そのシーンで成される二人の会話がそれを補足している。

"Do you Love me?"

"I Love You"

"And You trust you?"

"I trust you"

(次の記事に続きます)
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