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この世界の片隅に

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 近くのシネコンではレイトショーがすぐ終わってしまい、なかなか
観に行けませんで往生しました。ヒットしたおかげで新たに上映枠も
増え、漸く観れました。
 原作は読んでました。こうの史代作品はこれが最初の出会い、以降時間を
遡行して「夕凪の街 桜の国」は電子書籍で‥。読んだのはこの2作品だけ
だったな(泣)。

 漫画読了したのはもう7年も前、何度か再読はしてましたがいい具合に
記憶から抜けてきたところで再度読まずに映画鑑賞。とはいえ部分的に記憶
しているところから映画が省いたところが若干気になったのも確か。

 なぜ冒頭の、化け物に拐われそうになった「夢物語」のラストのナレーション
を敢えて省いたのか?
 このエピソードが主役夫婦の最初の出会いで、映画では最後にそれが本当だった
ことに二人が気づき驚く展開に(漫画では周作さんは気づいてないよな)。

 とはいえ、原作漫画をそのままなぞって映画化するには当然時間も足りない
訳で、ここは特に文句がある訳でもないですけどね。

 あーでも、すずが妊娠してなかったってオチ(泣)のやり取りはなかったです
よね?あれも何でなんだろ???

 傑作ですし、当時の時代考証を本当に細かいリサーチで映像化した「労作」と
して素直に賞賛すべき密度濃度に終始圧倒され、でした。

 公開間もなく、ネットでは「声高に反戦を叫ぶ映画でないところ」が高評価
との意見が多いんだがそれはどうなのよ??との意見(ややこしいな)があった
ようですが、原作では解説であった「当時の情勢」が映画では一切なく、徹頭
徹尾、一市民の女性のすずからの主観視点での描写のみに絞られているところが
そう感じさせたんでしょうけどね。
そういう映画、今まで全くなかった、訳でもないとは思いますが(ジョン・ブア
マンのHope and Gloryとか)、ここまで徹底した展開のは確かになかったかも
です。
 
 無条件降伏が発表された折のすずの慟哭の場面、韓国旗が掲げられる1カット、
これも記憶からは抜けてましたが原作漫画にもありましたね。あれ?当時まだ
大韓民国は‥と思い、でもリサーチ徹底してるんだから当時この旗も実在してた
んだろうなとも考え、今この感想を書き記すのでネット検索してちょっと吐き気
がしてます(怒)。

 まあそれこそ、プロが丹念なリサーチをして当時の一市民の感情、イデオロギー
を推察して描いたのを、自称保守実態はアジア民族人種差別主義者が都合のいい
ように持ち上げんな!!ですよ。

 とは言え、ここだけあからさまに台詞を変えるのは、うーんここだけ監督自身の
それこそ「イデオロギー」を込めてしまうのは、否定はしませんが疑問を持った、
とまでは書き残しておきます。やはり取捨選択は気になるよね。

 大切なもの、大切な人が失われても奪われても、それでも生きていく。只管
生きる。食べ物の事を常に考え(ってこれ自体もホメロスのオデュッセイア、
サイクロップスに仲間を殺されたオデュッセウス一行が、肉を焼いて食べてか
らそのあとに、殺された仲間の死を嘆き悲しんだ話を想起しますが)、失った
もの、人の記憶を抱えて。

 それでも、生きていく。失ったもの、人の記憶の器として。時に「永遠の
秘密」を惜しみ、時にその秘密が秘密でなくなった刹那に触れ。

 「セカイ系」というのは、俯瞰の視点でこの国、この世界、この宇宙を
理解した気になって、まあそれはそれでいいけど、大上段に構えて偉そうに
結局ミニマムな器量の狭い言動に終始するという多くの思考に対するアンチ
ズムとして起こるべくして起こったムーブメントの総称、と自分は思ってい
ます。ネット情報に限らず、本でも映像でも「世界を知る」ことのあやふやさ
いい加減さ、危険性を。

 だからこそ、いや、だからという訳でもないんだけど、原作とは違う、映像
化する意義という事で、「当時の一人の女性が、炊事等日々の生活の労働でだ
け世界と繋がっていた、その上で本当に世界との繋がりはそれだけで終わって
しまっていいのか!?」への明確な監督自身の一歩踏み込んだイデオロギーを
込めるべきだったのではないか!?とも思います。間違ってるにせよ何にせよ。

 憲兵に理不尽な扱いを受け、笑い飛ばして終わらせる、米国のビラをお上の
指示を無視して生活に有効利用する、ならば両親を原爆で殺され、おそらくは
妹も殺されるであろう状況に、すずが何の感慨もリアクションも起こさない
原作の展開は、まあ展開が違う方向に行くのを避けたのであろうとは思います
が、ここは映画では描いて欲しかったところではあるんですけどね‥。まあこ
れも「この映画には〇〇がないからダメ」論法の意見かもしれないんだけど、
自分は必要なんじゃないかなあとは思います。だってすずは広島市民なんだか
ら。
 
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